LIVE REPORT

PJマジック

粋なヒビキに惚れました。家でも使ってるんです。黄色に赤文字の、
あのケロリンの桶(モチロン購入)。
ときどき、ひとり裸で鳴らしてみます。 でも、駄目なんです。ミクロなウチの風呂場では。
イナセな小道具、むなしいあだ花。
一時の感情にほだされて思わず連れて帰ってしまったが(買ったんですけどね)、コイツが心おきなく鳴りヒビイテいたのは、やはりあの銭湯の洗い場だったのだ。と、60wの下で苦悩する毎日。
銭湯は耳だけでなく、目でも楽しい。
湯に煙る富士山画。高めの窓から差し込む夕暮れどきの光。目の前の爺さんのオリジナルな健康体操。
ゆったりと湯につかりながら、それらをぼんやりと眺めていると、これまでの自分とは数ミリ違った自分になれます。
独特の時間が流れているんですよね。銭湯って。
しっかし、こないなスっテキな場所で極上の音楽聴けたら、どんだけ気持ちええのか?ええのんかぁっ!?
しかも、ウマイ酒まで飲める言うたら、どないすりゃエエんじゃ、こりゃぁ!!
と、スタッフの一員としてあるまじき過剰な期待と興奮と思い込みを胸に、「風呂ロックVol.2」当日を迎えたのでした。
その日、弁天湯に足を運んでくださったお客さんは約200名。
脱衣所のフロアには、ドリンカーのほかにカレーやアンダギーのお店がイイ匂いただよわせてて、ちょっとした縁日の風景。お客さんも、開演前からすでに赤い顔した気合十分の御仁やら、カップル、親子連れ、お年寄りまで。みんな和やかに普段とは違うお風呂屋さんの眺めを楽しみつつも、会場全体がかなりの熱気でふくれ上がっておりました。 今回のメインと司会はPJさん。
日本のレゲエシーンの草分け。吉祥寺の星。
実はPJさん、開場5分前のこと。スタッフ全員の緊張が高まるなか、あのハスキーな声と人なつこいスマイルでひとりひとりに握手。「よろしくね」って。この人の流儀、かなり感動。人柄にじみ出てます。
さてさて、湯気のなかでいつも眺めていた富士山が美しく照らし出されて、ついにライブがスタート!!
沸き上がる拍手と歓声!!イイ感じに仕上がってきたみんなの熱気もそのころには臨界点に達して、弁天湯の窓は全開。ちなみに2月です。
あぁ、これはいけません。1番手のアイリーさんから、すでに完全にノックアウト状態。この人の歌声でどっかにさらわれて行きそう。
ていうか、銭湯にレゲエは反則です。
私なんぞの期待をはるかに上野のお山の西郷どん。御殿山越え吉祥天。その後はめくるめく極楽絵図の展開。
PJ さんのバンドは文句なしにカッコ良い。そして、音楽はとても自然体。研ぎ澄まされていながらもどこか懐かしい。ピアニカはせつない青空。ジャンベは大地のリズム。ギターは遊ぶ風。ヴォーカルは温かい雨。
大人も子供もみんないつの間にか踊り出していました。それぞれやり方は違うけど、ひとつになって。音楽にこんな力があるなんて。
PJ マジック。
そして、その日開場にいた全員が最高の幸福感につつまれたアンコール。「いい湯だな」これがきっちりPJ風味になるんですねぇ。
本当にあっという間の2時間半。熱い吉祥寺の冬の夜。銭湯にパッケージされた最高のエンターテイメントを楽しんで(本物の手品もあったりして)、みんなそれぞれに顔を上気させて弁天湯を後にしました。 ライブレポート/浅見昌弘